「自費出版」の第一歩

「自費出版」を思い立ったら、まずは自分の頭の中にある本のアイディアを文書にまとめます。作りたい本(またはその時点ですでに書き始めている原稿)のテーマ・概要、出版の目的、どのぐらいの部数を出版するのか等々、A4の紙2枚程度にまとめます。この文書は、自費出版のサービスを提供している業者・出版社に提出するものです。文書は手書きでも大丈夫ですが、パソコンで作成した文書ならなおよいでしょう。文書の作成と同時に、業者・出版社を選びます。会社によって提供するサービスも料金も異なりますし、編集者の対応力・編集力も一人ひとり違います。できるだけ多くの業者・出版社のサイトをチェックするのはもちろん、いいなと思った会社に資料請求をしたり、不明点は電話で問い合わせるなど、自分が納得いくまで下調べしましょう。調べた結果、「ここにしよう」と思った業者・出版社に連絡をして「自費出版を希望していること」「自分が出したい本の概要をまとめた文書があること」を伝えます。その後、業者・出版社の担当者と初めて打ち合わせをします。その際は、どういう本を作りたいのか、ライターを入れるのかどうか、いつまでに出版したいか、流通にのせる意向がある場合はその旨を、また自分が用意できる予算など自分の思いをしっかり伝えましょう。また、不明な点はその場で担当者にたずねましょう。とくに金銭がからむ事柄、たとえば著者側にどんな支払いが発生するのか、その支払いはいつまでなのか、あるいは印税などの契約はどうなるかなどといったことは、自分が納得いくまで担当者にたずねるようにしましょう。それでも不審な点が残るようであれば、それで終わりにして、新たに業者・出版社を選定し直すのも一つの方法です。

分巻するかどうか迷ったら

本を出版するにあたって、ページ数の多い本をどう扱った方が得策か考えてみましょう。一般的に、1冊当たりの総ページ数は、500頁が限界と言われています。これは、本の開き具合、読者が本を持った時の負担度などが根拠となっているようです。それでは、1000頁を超えるよう本を依頼しようとした時、編集担当者はどう対応してくるでしょう。通常では、分巻することを進められるでしょう。そこで次に考えるのが、原稿の進捗状況です。ほぼ完成に近いのであれば、依頼先への経費支払に支障なければ、全頁脱稿も視野に入れて相談することをおすすめします。最終的に分巻となるのは、やむを得ないでしょうが、この方が経済的であるのは間違いありません。分巻ものは、基本的に各巻印刷形式や製本形式あるいは使用用紙などが同じで進められます。ということは、最初はまとめて、として進めていけば結果的に分けたとしても、経済的であることに間違いなさそうです。本自体の一貫性という点でもメリットがあります。ところが、間をおいて発行される分巻ものとなれば、どこかで記述上の不統一が出ることは、覚悟しなければなりません。もっと決定的なのは、既に発行した前巻に誤りが発見されても後の祭り、となってしまいます。内容の統一性維持という点でも、最初は一巻物として進めていった方がよい、という理由です。こうして考えると、たとえ総ページ数が多くとも一巻物で進めていくのが全てよし、と言えそうですが、ここで一つ依頼者側として覚悟しておかなければいけないことがあります。当然ですが、総ページ数が多いということは、それに合わせて各作業のボリュームも大きくなるため、トータル的に大変な作業になるということです。例えば、編集段階のゲラ読み込みの徹底もさることながら、頻出用語や用語句の表記統一、再考箇所や要調査個所の拾い出しなど、全てにわたってそれなりの時間が取られると考えて、いろいろ工夫していくことが必要となります。

総ページ数は大事な要素

本を出版するとき、特に自費でとなると、どうしても費用に跳ね返ってくる“総ページ数”を事前に知っておくことが大切です。では、具体的にどうすればいいか、考えてみましょう。最初にまず考えられるのは、1ページ当たりの収容文字数を想定してみること。そうすれば、自ずから現行の総文字数で割れば、答えは出てきます。といっても、あくまで概算ですが。ここで、1ページの収容文字数の算出方法ですが、例えば図書館や本屋さんで見ていて体裁とか読みやすさが、自分なりに良いと思える本を数冊探してみてください。そして、その本の大体の1ページの文字数(1行の文字数×行数)がわかれば、まずは大まかな数値はつかめるでしょう。そして、次の段階として、具体的な本では見出し(大体フォントが大きめな場合が多いです)のスペースも確保しなければいけません。また、体裁を整えるため、行間調整も必要でしょう。部扉や章扉を独立で設ければ、更にページ数は増えていきます。ここまで考えると、もう初校ゲラの組み上げ後までいかないと総ページ数はわからない、となってしまいます。それでは、事前に総ページ数を把握するのは無理、と言うことになりかねません。そこで、あくまで参考としてですが、1つの方法をご紹介します。原稿の総文字数の1.5倍程度の数値を、1ページ当たりの文字収容数で割った値が、目安として総ページ数と考えてみると案外大きなずれは生じないと言われています。それではまだ心配、という人には更に次の手をご紹介します。時間的に許されるのであれば、という前提条件は必要ですが、具体的な“ページレイアウト”まで考えてみる、ということです。そうすれば、総ページ数の数値の確度は、格段と上がることでしょう。

書店で本の構想を練りあげる

自分の本を「自費出版」するにあたって、書きたい本のテーマが見えてきたら、書店に行き、売り場を見てみましょう。自分が興味・関心を持っているテーマにこだわらず、いろんなジャンルの売り場を見ることをお勧めします。それによって、自分が書きたい本は、どのジャンルに当てはまるのかがわかります。また市場のニーズを把握することができ、頭の中にある本のアイディアをブラッシュアップすることにつながります。書店全体をぐるっと見渡せたら、今度は、自分が書きたいと思っている本に近いテーマを取り上げている本(「類書」という)を探してみましょう。類書が見つかった場合は、その本がどのような内容を、どのような切り口で構成されているのかを見てみます。これを「類書調査」と言います。出版社の編集者も、この類書調査を日ごろから行っています。類書調査によって、読者ターゲットが絞り込めたり、類書の中でも売れ筋の本の傾向がわかります。また数多ある本のなかで、表紙カバーは何色が目立つのか、どんなデザインが好まれるのか、ということもわかります。プロの編集者のように売れる要因を分析する必要はありませんが、類書を見ているうちに、自分のアイディアに売れ筋の傾向を取り入れた本の構想が浮かんでくることがよくあります。読む人に喜ばれるための本を作ろうという意欲もわいてきて、さらに自費出版の楽しさがさらに増してくるでしょう。このようなメリットを期待して書店に行くのですから、いくつものフロアに売り場を備えた大型書店ではなく、さりとて小さい書店でもない、一つのフロアですべてのジャンルの本を見ることができるような書店がお勧めです。

自分の本をイメージしよう

自分の本を「自費出版」したいと思ったら、自費出版のサービスを提供する専門業者・出版社を当たる前に、まず自分がどんな本を作りたいのかをイメージしてみましょう。イメージすることによって、どんな業者・出版社の、どんなサービスを利用したらよいのか、どれぐらいの予算を準備しておくべきかがわかりますし、出版の打ち合わせに入ってからも、実りある話し合いができるでしょう。ただ漠然と、自分が作りたい本は何だろうと考えていても、イメージはなかなか浮かんでこないものです。本を出版する目的は何なのか、ちょっと考えてみましょう。たとえば、「名刺代わりに本を出版したい」という目的があれば、「自分が仕事をする中で得た専門知識やノウハウ、体験を伝える本にしよう」ということになるでしょう。また、自分がこれまで体験したことを伝えたいのであれば「自叙伝にしよう」とか、人生観や価値観を表現したいのなら「エッセイ風にまとめよう」とか、うっすらイメージが見えてくるでしょう。それができたら、今度は、本を出版することで自分が実現したいことは何なのかを考えてみましょう。労力とお金をかけて本を出版するのですから、読んでくれる人に喜ばれるものを作りたいと思うのではないでしょうか。このように第三者に喜ばれる、という条件が加わることで、自分が書きたいテーマが見えてきます。ビジネスチャンスが広がるなど、自分の仕事に何らかの成果が現れることを期待している場合は、読者は顧客あるいは見込み顧客ということになります。すると、顧客が知りたいことは何か、顧客が困っていることは何だろうと深堀りしていくと、より具体的なテーマが見えてきます。テーマが見つかったら、業者・出版社の担当者に見てもらうことを想定して企画書を作成します。

単行本と文庫本

自費出版する上で必要になる知識の一つに、製本形式の違いがあります。よく耳にする形式に、単行本、文庫本、新書等がありますが、皆さんはこれらの違いをご存知でしょうか。単行本とは字義通り、単独で刊行される本を指します。その一冊で完結しているという意味で、叢書や全集の中の一冊とは区別されます。一般に単行本の典型として知られているのは小説やコミックでしょうが、実用書やビジネス書であっても単行本と呼んで差し支えありません。実は単行本であることを示すマークが書籍には存在します。Cコードと呼ばれるもので、2桁目が0であれば、正式に単行本と認定されたものになります。全書籍に占める割合が最も高い形式ですから、見た目については今更説明する必要もないでしょう。  単行本は刊行に至るまでの経緯によって2つに大別できます。一つは過去に雑誌等に連載されたものを、改めて纏めて一冊の書籍に仕上げたものです。もう一つは書下ろしの書籍です。前者は連載時の原稿料と、書籍の印税とが対価として発生するのに対して、後者は印税のみが支払われます。  ところでコミックスはその性質からして叢書に当たると思われやすいのですが、実はCコード上は叢書に分類されていません。「雑誌、書籍、コミックス」という大分類が存在するため、もはや書籍ですらないわけです。但し、出版社による扱われ方は、Cコードに反していることもあります。  単行本の種類として、ハードカバーとソフトカバーとが存在することはよく知られていますが、出版業界では前者を上製本、後者を並製本と呼ぶことがあります。ハードカバーの本は高級本として、価格も高く設定されています。とにかく装丁がしっかりしていることから、保存にも向いています。

影響力のある本と作家

出版社はベストセラー作品が生まれると、その作品の影響力、著者の為人を分析し、様々な可能性を思案します。例えばその本で使用された専門用語が人口に膾炙するようになると、一定の影響力を持っていると判断します。また、ベストセラーがロングセラーとして影響を与え続ければ、一層評価を高めます。著者の為人については、メディアへの出演を軸に、売り出せる人物かどうかを判断します。作家としてのオーラがあることは必須として、その他にも「流暢に話せること」「独創的な会話を繰り出せること」「容姿が優れていること」といった条件が一般的となっています。  1流作家になるためには、ヒット作を生み出した後、出版社のこうした要請に上手く応える必要があります。もちろん断ることも出来ますが、作家としての地位を長く保ちたければ、出版社との関係性を重視しないわけにはいきません。特にメディアへの露出は頻繁に要請されますから、それに向けての準備は欠かせません。例えば企業に勤めている人であれば、会社の許可を取り付ける必要があります。SNS等も、匿名にしたり、過激な書き込みを避けたりするなどの配慮が必要となります。  ところでヒット作を生み出す作家には、どのような特徴が垣間見えるのでしょうか。これは出版業界の人間にしか分からないことですが、自己主張の強い人は注目される傾向にあるようです。もちろん謙虚にならなければならない場面では、そのように振舞うことも出来る人を指します。彼らは状況に応じて適切な振る舞いを実践できる人たちであり、出版社としてもそれを魅力と捉え、仕事のオファーを行うのです。

文学賞の受賞と商業出版

自作のフィクションを上梓したいのであれば、文学賞を受賞する他ありません。しかし過去に文学賞を受賞できた人は一握りの天才たちであり、彼らは数千倍もの競争率を突破した人たちです。そこに仲間入りするのは、およそ現実的ではありません。ですからどうしても諦められない人は、先ず自費出版に挑んでみるのも選択肢でしょう。しかし自費出版からすぐに商業出版が実現するわけではありませんから、しばらくは自費出版の制度に順応する必要があります。自費出版を始める契機は人によって様々ですが、経済的余裕さえあれば、誰でも始めることが出来ます。  自費出版で世に送り出す本の出来が、商業出版の実現に関係することは言うまでもありません。出版関係者とのコネクションなどの外的要因は運に左右されますから、先ずは自費出版する本の中身を充実させることに心血を注ぎます。その内容に光るものがあれば、出版社が興味を持つこともあるでしょう。自費出版するためには、専門業者を利用するのが一番です。最近は多くの自費出版業者が存在するので、じっくり比較検討しましょう。業者は全ての工程を一括して請け負っているところもあれば、一部の工程に特化して受注しているところもあります。目的に合わせて選択するようにしましょう。もちろん大手の出版社や印刷会社も自費出版を手掛けているところがありますから、HP等を参考にされるとよいでしょう。  最近は自費出版の件数が増えていることから、同時にトラブルの類も耳にするようになりました。特に経費に関する認識に隔たりがあると、後々トラブルに発展することが多いようです。

表紙のデザイン

 表紙、帯のデザイン考案は、自費出版であってもスケジュールが決まっています。ですから著者は迷惑を掛けないように、手際よく済ませる必要があります。デザインに用いる素材は様々で、写真を使うこともあれば、文字だけで済ませる人もいます。どうしても思い浮かばない場合は、デザインの全てを出版社に委ねることも出来ます。その場合は、出版社が外注する形で、プロのデザイナーが作成してくれるでしょう。本のテーマに合わせて考案された幾つかのデザイン案が送られてきますから、比較検討して選択しましょう。コツは直感で決めることです。迷った時は、信頼できる知人に相談するのも良いでしょう。
 表紙、帯を軽んじてはなりません。これらは本の顔とも言うべき大切な役割を果たします。読者が最初に目にするのは表紙ですから、その時点で印象が薄ければ手に取ってもらえないかもしれません。後悔しないように直感で決めることをお勧めします。出版社によっては、完成サンプルだけでなく、見本誌や色見本を届けてくれることがあります。見本誌は完成品と同じサイズのもの、色見本は表紙に実際に使われる色です。これらの見本が送られてきた時点で、大体のイメージを作り上げておいた方が無難です。繰り返しますが、製本にはスケジュールがあります。表紙のデザインにはなるべく時間を掛けない方が、製本は成功裏に終わりやすいものです。というのも、デザイナーが仕事の遅い人であった場合、思わぬ形で遅れることがあるからです。デザインにそれほど拘らない場合は、手元にある写真を使うのも選択肢です。写真は大きなインパクトを与えるため、本のテーマに合致したものを選ぶようにしましょう。見栄えの良い写真であっても、本の内容と関係の無いものであれば、読者を困らせることになります。

出版社とのやり取り

 自費出版をしていく中で、原稿の執筆と、その校正・添削を中心に、著者と出版社は何度もやり取りすることになります。ですから、メールや封筒は簡潔に、且つ失礼が無いように作成します。原稿を郵送する場合は、封筒に宛名を記入しなければなりません。社名だけでなく、必ず担当者の氏名も入れるようにしましょう。もちろん自分の氏名は裏に書くわけですが、用件を小さく付記すると、丁寧な印象を与えます。例えば、「添削完了」といった文言だけでも有効です。
 原稿をメールに添付したり、封筒に入れたりする際、簡単な文章を添えておくのも大切です。挨拶文でも構いませんし、「確認をお願い致します」等の用件でも結構です。とにかく何の説明もない状態で送るのは控えましょう。また、連絡先は明記しておくに越したことはありません。出版社からは担当者の連絡先が伝えられるはずですから、著者も同様にメールアドレスや電話番号を開示する必要があります。
 さて、原稿のやり取りが一通り終われば、今度は表紙と帯のデザインに移ります。実はデザインにかけられる日数はそれほどありません。というのも、ゲラ刷りが終わる頃には、出版社でスケジュールが確定しているものだからです。発売時期が決定すると、それに合わせて行動しなければなりません。もちろん多少の融通は利くでしょうが、いい加減な対応をしてしまうと、何度も電話やメールで催促されることになります。出版社が提示するスケジュールは、かなり細かく指定されているのが通例です。ゲラ刷りの回数は定められていますし、表紙のデザインにも締切日が設定されています。ですから迷惑を掛けないように、手際よく進める必要があるのです。